弁護士コラム
【弁護士コラム】刑事事件:侮辱罪(刑法231条)の法定刑の引上げ

こんにちは。相模原の弁護士の多湖です。
インターネットの誹謗中傷が深刻な社会問題として連日取り上げられていますが、今日は「刑法231条の侮辱罪」に関するお話。
侮辱罪とは — 名誉棄損罪との違い
侮辱罪(刑法231条)は、「事実を適示しなくても、公然と人を侮辱した者は、1年以以下の懲役若しくは禁固若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。」とされています。
相変わらず、法律の条文は分かりにくい日本語で書かれています。
まず「事実の適示」というのがなんぞやということですが、これは刑法230条1項の名誉毀損罪を受けて、このように書かれています。
人の名誉を傷つけるときに「具体的な事実」を示すと、名誉棄損罪となります。
例えば、「あいつは同僚の〇〇と不倫をしている。新宿のラブホテルから出てくるのを俺は見た。とんでもない奴だ。」と会社で言いふらしたり、これをSNSに書くと、【名誉棄損罪】として、3年以下の懲役若しくは禁固又は50万円以下の罰金になる可能性が高いです。
これに対して、「きもい。」のような “事実を示さないで侮辱だけするケース” が侮辱罪にあたります。
具体的な事実の適示がない分、名誉棄損罪に比べて、罪が軽くなっています。
つまり、事実を示して人の名誉を傷つける場合が「名誉棄損罪」、事実を示さない場合が「侮辱罪」になります。
侮辱罪の法定刑の引上げ
侮辱罪の法定刑が引上げされた改正刑法は、令和4年7月から施行されていますが、SNS上の誹謗中傷を原因として自殺者が出たりしたことなどから、侮辱事案に対する抑制の一環として引き上げが行われました。
侮辱罪の法定刑の引き上げからかなりの期間が経過していますが、インターネット上の誹謗中傷が収まったとは到底いえない状況だと思います。
侮辱行為や名誉棄損行為に対して、民事で対応するのは非常に費用対効果が悪いのが現在の状況です。裁判所が慰謝料の引き上げを行いつつ、改正された侮辱罪について警察がどこまで真剣に取り組んでくれているか、検証が必要な時期に来ているといえます。
というのも、侮辱行為は社会にありふれており、件数的には一定程度あるはずですが、刑事裁判例に関していえば、最近の侮辱罪に関する事例は非常に少ないからです(一方で民事は一定数あります)。
また、そもそも侮辱行為が起きないように、あるいは被害救済をしやすくするために、SNSについて、アカウント作成時の本人確認を厳格にし、「誰が発信したコメントなのか、現在の発信者情報開示ではなく、かつ多額の費用を掛けずとも、容易に特定できる法改正」が必要であるように思います。
以 上
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