弁護士コラム
【弁護士コラム】刑事事件:主婦を雇いたがる闇バイトと、返り討ちと過剰防衛

相模原の弁護士の多湖です。
最近ニュースが絶えない「闇バイトによる強盗と、その返り討ちと過剰防衛」についてです。
闇バイトの現状
まず、闇バイトですが、ごく普通の大学生や主婦が巻き込まれることが後を絶ちません。
大抵がSNSで知った求人情報等から巻き込まれています。
最近の傾向としては、募集対象として、若い男性だけではなく、「お子さんのいる主婦」が狙われる傾向が高まっています。
強盗の実行行為は若い男性に担当させて、金の運搬、引出や振り込みを主婦に担当させるということを行っています。
お金の引出等の部分で、主婦の方を狙っているのは、もはや耳にも入れたくない非常に悪質な話ですが、子どもの情報(氏名、住所、学校名)を取得して、脅して人質に取れば裏切らない(お金を持ち逃げできない)からです。
途中で気づいても脅されたりします。
闇バイトは逮捕されれば、一発で実刑になる可能性が非常に高く、かつシングルマザーの場合などは、高い確率で子どもは児童相談所に預けられてしまいます。
最近の広告は非常にわかりにくく、日当もそこまで高くないものもあるため、SNSでは基本的にアルバイトに応募しないことが肝心です。
返り討ちと過剰防衛
次に、闇バイトは最近いわゆる富裕層だけでなく、普通の民家も狙っています。
Googleの検索に「闇バイト」と打つと、「返り討ち」と出てくるほど、国民の不安は高まっています。
この返り討ちについて、自宅を襲撃した強盗犯に対しては、盗犯等防止法1条1項は、「窃盗犯人や住居侵入犯人がいる場合に、自己または他人の生命、身体又は貞操に対する現在の危険を排除するために犯人を殺傷したときは、正当防衛行為があったものとする」としています。
しかし、最大の問題は、同法が適用される場合でも、過剰防衛の有無が問題となり、被害者のはずが、逮捕されたり、刑事裁判に掛けられることがあるというところです。
最高裁判所平成6年6月30日判決は、闇バイトに関するものではないですが、盗犯防止法1条1項の防衛行為の相当性は、刑法の正当防衛の場合よりも緩やかに判断されるとはしているものの、結局結論として、過剰防衛とされてしまっています。
闇バイトは男性の集団でしょうし、凶器を持って自宅に来るわけでしょうし、社会からの犯人への強い非難に照らせば、過去、過剰防衛とされている他の類型のケースに比べれば、相当性が緩やかに判断されると考えられます。
しかしながら、例えば相手に非常に重篤な怪我を負わせてしまったり、勢い余って殺してしまった場合などは刑事裁判に掛けられてしまう恐れが高まります。
万一殺してしまうと、さすがに警察も動かざるを得ません。
被害者のはずの自分が嫌疑をかけられ、結局無罪になっても長い間、裁判で戦ってその不安にさいなまれるというのが絶対に避けたいところです。
また、自分の自宅を荒らされて、殴られてカッとしてしまってやりすぎてしまうこともあります。
あるいは揉みあいになってしまって殺されてしまうこともあり、実際に強盗関係ではそういうケースも見かけます。
自分が犠牲になるならまだしも、例えば、お父さんが正義感から強盗を撃退しようと殴り掛かったら、犯人の集団からお父さんが殴られてしまって、息子が慌てて助けに入ったら犯人に息子が刺されて殺されてしまという悲惨なお話も十分にあり得るわけです。
それは避けねばなりません。
自分を守るための自衛力の行使
武道を学んだことがある方はお分かりだと思いますが、武道を学ぶと、「力を使うことではなく、まず危険から逃げること」を教わります。
自宅には貴重品は最小限しか置かず、あくまで自分を守るための自衛力の行使に留めるよう心掛けた方が良さそうです。
意識としては、相手をやっつけて制圧してしまおうとするのではなく、まずは警察及び契約している警備会社に通報し、危険を避けられないときは、自分や家族をその場から逃がすための自衛力行使をするという意識でいる方が良いのかと思います。
事前に、監視カメラの設置や警備会社との契約等を行うのは、有効な対策です。
今後の闇バイトに関する政府への要望
もっとも、現在の闇バイトは、明らかに国民生活を脅かしていますから、インターネットでの人員募集の厳格化や、正当防衛の絶対的緩和、厳罰化など、政府には、その抑止策について十分に取って頂きたいと思います。
以 上
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