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弁護士コラム

カスハラと企業防衛 ~最近話題のカスハラとは~

カスハラと企業防衛 ~最近話題のカスハラとは~

こんにちは。相模原の弁護士の多湖です。
今日は最近話題の「カスハラと企業防衛について」です。


「カスハラ」とは

カスハラとは、カスタマーハラスメント略称であり、「顧客からのクレーム・言動のうち、特に悪質で労働者の就業環境が害されるほどの行為」をいいます。

民法上、刑法上の違法行為はもちろん、その一歩手前で違法とまでは言えないけれども、顧客としての立場を濫用的に用いている場合も含めるべきでしょう。


弁護士の職務を行っていて年々増えていると感じるのは、

(1) 自分は正しく、相手が悪い
(誰の言うことも聞く耳を持たない。)

(2) 悪いことをしたのだから何をされても仕方ない
(ミスの重さと、ミスに対して改善を要求出来る内容、手段は均衡が取れていなければならないという「比例原則」の概念がない。)

(3) “自分の正しいと思う行動、考え=法律=権利“を信じ込んでいる
(裁判所や弁護士から法律の正しい解釈を指摘されてもそんなはずはないと信じない、あるいは法律が間違っていると考える)


女性にしつこく言い寄るような類型を除き、クレーム型のカスハラの多くは、恐らく(2)あるいは(3)で、企業側にもある程度の(あるいは非常に小さい)落ち度があるところで、それを自分の望み通り、最大限責め立てるという事例が多いように思います。

※銀座の天ぷら店でお店に土下座を求めたのは記憶に新しいです。


他に、有名な裁判例では、企業側のミスに対して土下座を強要したり、動画で撮影したり、怒鳴りつけたりというケースがあります。

母親宛ての荷物が指定の日時に届かなかったことに腹を立て、市内の運送業者の営業所で所長の男性に対し大声で繰り返し怒号を浴びせました。そして受付カウンターを拳で叩きつけた上、所長に対し土下座を要求し、その様子を動画で撮影した事案では、懲役10か月、執行猶予3年の有罪判決が言い渡されています。

土下座強要「クレームの域超えている」コンビニ従業員に有罪判決 「カスハラ」に考え方を示す企業も)

大分|TOS NEWS NNN (ntv.co.jp

カスハラに対する企業防衛の方法

カスハラに対する企業防衛は4つの方法に分類できます。


1. 刑法

2. 民法(不法行為)

3. 契約締結の自由(企業活動の相手を選ぶ権利)

4. 弁護士の介入(代理人の選任)


上記の土下座の事案は、1. 刑法 のレベルの事案です。
刑法に反するケースは第三者の目にも明らかで、企業側としても対処もしやすいです。

このレベルの場合には、企業としては、警察に対して刑事告訴や被害届を提出します。これらは犯罪ですから、躊躇してはいけません。


具体的な事例としては、

(1) 業務妨害罪(例えば、何十回、何百回と電話をしたり、長時間会話をしたり、汚物をまいたり、業務に支障をきたす行為)
(2) 強要罪(例えば、土下座、繰り返しの謝罪などを強く求める行為)
(3) 脅迫罪(口コミで低評価をするとか、SNSに風評を書き込むと脅す行為)
(4) 暴行罪、傷害罪(殴ったり、蹴ったり、人に向けて物を投げたりする行為)

などが典型です。

次に問題となるのが、二番目の 民事上不法行為(民法709条)となるケースです。
犯罪が成立する範囲が一番狭く、不法行為が成立する範囲の方が、広い傾向にあります。

民法で企業側がカスハラを訴えるためには、通常、民法709条の不法行為を用いることが多いです。

但し、民法709条では、「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」とされており、これが非常に抽象的ですので、実際に違法行為として訴えられるかどうかというのは微妙な判断となります。

基本的には、「顧客としての権利行使とは呼べない、濫用的、逸脱的な行為であること」が明らかな行為を補足することになります。

例えば、顧客が従業員に対して執拗に長時間大声で怒鳴り続け、精神を病んでしまった場合など、暴行や傷害までの立件を警察ができない場合などでも、企業として法的責任を求めなければならない場合があるでしょうから、そのような場合は民法上の対処をするということは十分にあり得ます。

ただ、民事での請求は労力がかかるため、今までは実害が出ない限り、企業側がこの手法をとる可能性は低いというのが一般的な傾向でした。

そのため、多くの場合、損害が生じる前に、次の 3.契約締結の自由 の対応を取ります。
それが「当該顧客との今後の取引の全停止」です。

一部の公益性を有する独占分野を除き、通常の企業は顧客を選ぶ権利があります。顧客が企業を選ぶ権利があると同様にです。

誰と契約をするかは、双方にとって自由だからです。

例えば、飲食店などが昔からやっている「出禁」などが典型ですし、通常の企業でも問題のあると判断した顧客をブラックリストに登録して、今後の取引を全て断るということが可能です。

顧客側が、断られているのに執拗に連絡を取ったり、契約の締結を求める行為は強要に当たる可能性があります。

そして、最後の手段が 4. 弁護士の介入 です。顧客側があまりに執拗であれば、企業側は顧問弁護士などを介して対応することになります。

顧客側の対応が違法かどうかは、関係がありません。

代理人をつけて対応するのは個人、事業者問わず権利ですので、刑法、民法の問題が生じずとも弁護士を介して連絡するように求めることが可能です。これによって係争案件に慣れていない自社の従業員を守ることが出来るようになります。

実は法律事務所には身近な<カスハラ対策>

最近話題のカスハラは、実は法律事務所は社会で問題になるずっと昔から良く受けています。
ただ、これは顧客からではなく、「相手方」からです。(そういう意味では「カスタマー」ではないのですが)

電話で暴言を吐かれたり、怒鳴ってくるのは日常茶飯事です。
私の知人弁護士は、法律事務所の前でチェーンソーを振り回されたことがありますし、あるいは相手方にメールアドレスを教えようものなら腹いせで迷惑メールが一日に数百通来るようになったりもします(悪質なサイトにアドレスを登録したり)。

事務所を何度も訪れて、目の前で街宣活動をしてみたり(警察に捕まりますが)、お盆休みの休業中に連絡が取れないのは職務怠慢だと懲戒請求をするものもいれば、口コミに悪く書くなど朝飯前です。

さらに一歩進んで、闇金の方に至っては、救急車や警察、ピザ屋を毎日呼び続けるのもよくある話です(但し、一般の人がやるとすぐに捕まります)。

別の場所でお会いすると大変立派な方でも、相手方になった途端にこういった行為を行いますので、人は相手を自分の希望を叶えてくれない、言うことを聞いてくれない、すなわち「敵」だと認識すると、自分の中の悪意を総動員して嫌がらせをするのかもしれません。

企業が採るべき具体的対策

これらの実体験を踏まえて具体的な対策をご紹介します。

カスハラ対策で一番大事なのは、「記録化と証拠収集」です。

監視カメラ

まず、音声も録音できる監視カメラは必ずつけるべきです。店舗内で怒鳴っている顧客がいれば、その会話の内容も時間も明らかにできます。

録音

電話は、簡単に録音できる機種がよいです。

違法行為を疑われる場合に録音する行為は、相手方の同意がなくても、裁判の証拠収集のための正当行為になります。最近、大企業では「この会話はサービス向上のために録音しています。」とアナウンスが流れますが、カスハラ対策に全ての電話を録音する一方で、このアナウンスを流すことで「録音について黙示の同意を得ているから、録音行為が適法である」という理屈でしょう。かかってくる電話全ての録音をする場合には、このアナウンスは流しておいた方が無難です。

通常対応とカスハラ対策との振分け基準を社内に設ける

社内で通常の企業対応をするクレーム案件と、法的対応に切り替える線引きをしっかりと検討しておく必要があります。策定したうえで次の社内研修等で周知することが望ましいです。

従業員へのカスハラ対策の講習と報告体制の整備

現場の従業員の方へのカスハラに関する教育は必要です。

まじめな従業員の方ほど、「お客様」だからと言い返せない傾向にあります。あるいは “言い返してはいけない” と思い込んでいる可能性が高いです。そのため、カスハラに対する知識を広めるとともに、トラブルになっている案件については、初期段階から上司と情報共有できる体制を、あるいは上司が直接対応する体制を整えるべきです。

弁護士が介入するラインを設ける

そして、最後が弁護士の介入です。

通常の企業においては、係争案件の専門家ではないですから、対応に限界があります。もう手に負えないと思ったら、「あとは弁護士にお任せしますので、私たちは今後直接対応することはできません。」といえるラインを設けておく必要があります。

このラインがないと、結局最後まで、上司の方を含めて対応しなければならなくなり、社員の方に強い精神的負荷がかかり、離職や精神病の罹患といった結果につながる恐れがあります。

これらは企業の従業員に対する安全配慮義務に反しますから、逆にいえば、これらの対策を採ることは企業側の責務と呼べるのかもしれません。


以 上

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