弁護士コラム
産休、育休中に離婚を拒むためにはどうすればいいか。
みなさんこんにちは。
相模原の弁護士の多湖です。
共働きが社会の主流になりつつある今、産休や育休を取られている方は非常に多くいらっしゃると思います。
産休や育休といえば、子どもが生まれてすぐの頃です。
そんな大変な時に配偶者から離婚を告げられることなどあるのか?とお思いになるのかと思いますが、実はこれ多いです。
恐らく、子どもの妊娠、出産等を機に夫婦の生活スタイルが変わり、夫婦でぶつかることが多くなるからです。
今日は、「配偶者から離婚を請求された場合に、産休や育休中を理由に離婚しないで済むか?」というテーマです。
産休や育休中だけを理由に離婚を拒むことは出来ない
結論からいえば、産休や育休中だけを理由に離婚を拒むことは出来ません。
「子どもが小さいのに?」「収入が減っているのに?」と思われるかもしれませんが、産休や育休中だけを理由に離婚を拒むことが出来ないのが実際です。
出産したばかり、子供が小さいことだけを理由に離婚請求を拒めないのは、専業主婦(夫)も同じです。
”収入の不足については、(不十分ながら)養育費で解決せよ”というのが、法あるいは裁判所の建前だからです。
ただし、拒めないからといって離婚に応じる必要もない
産休や育休中だけを理由に離婚を拒むことは出来ませんが、離婚に応じてあげる必要もありません。
産休や育休が明けるまで、離婚請求を排除するのはそう難しいことではありません。
「離婚を拒めないのに応じる必要はない?」これだけ聞くと、はて、何をいっているのやら?となりますが、離婚の仕組みを思い出して頂ければすぐに理解が出来るかと思います。
離婚には、協議離婚と調停離婚、裁判離婚があります。協議離婚と調停離婚までは、離婚事由があろうとなかろうと、片方が離婚したくないといえば、離婚は成立しません。
価値観の不一致など、双方に明確な離婚の責任がない場合には、最低3年程度は別居をしなければ、裁判離婚(強制離婚)は出来ません。
相手方に暴力や不貞などの明確な責任がある場合には、一般的に5年から10年程度別居しなければならず、特に子どもが幼い間は離婚出来ないとされています。
こちらに有責性がある場合でも、調停や裁判(東京高裁等も含め)には時間が掛かるので、なんだかんだやっている間に育休は明けるでしょう。
このように「産休、育休明けまで、離婚は待ってほしい」とそれだけ正面から主張しても、それは ”養育費などで解決してください” と言われてしまいますが、このように離婚制度の仕組みをよく理解し、しっかりその知識を利用すれば産休、育休明けまで離婚しない、同じ結果を得ることはそう難しいことではないのです。
別居だけして婚姻費用を貰い続ける選択肢
そして、離婚が成立するまでは、双方の収入比に応じて、配偶者と子どもの生活費の分担(婚姻費用の分担)をする義務が相手方にはあります。
収入がこちらが多い場合、夫婦で拮抗している場合を除き、離婚後にもらえる子どもだけの生活費である養育費に比べ、配偶者である自分の生活費も入るので婚姻費用は、それよりもはるかに高いことが大半です。
特に、持ち家などで、別居した相手単独名義で住宅ローンを支払っている場合、離婚が成立するまでは、相手には住宅ローン全額を支払ってもらい、かつ、いわゆる婚姻費用算定表の婚姻費用(から住居費として数万を控除した金額)も貰うことが出来ますので、経済的にはかなりのゆとりが出来ます。
例えば、婚姻費用の相場が15万円だとして、住宅ローンが10万円だとすると、相手方が住宅ローン10万円を払い、かつ婚姻費用15万円から3万円(収入により異なります。)の住居費を差し引き、差額の12万円を相手方から現金でもらい、さらに児童手当と自分の収入を足して生活費に出来るという形になります。
良く誤解されている方が多いのですが、婚姻費用が15万円で、住宅ローンが10万円の場合、残り5万円を払えばいいのだと主張される方がいますが、これは裁判所の考え方ではないのでお気を付けください。
住宅ローンは自分の財産形成のために支払っているもので、配偶者ではなく自分のための支出であるというのが裁判所の考え方です。婚姻費用15万円には食費や教育費、医療費、住居費相当が含まれていますが、住居を配偶者に使用させているので、15万円のうち住居費相当額(例えば3万円)は支払済みとして控除するという考え方なのです。
そのため、相手が不倫をして出て行った場合には、3年から5年以上離婚に応じず、高額な住宅ローンを相手方に負担してもらい、婚姻費用と自分のパートや手取り収入で生活を支え、子どもが全員小学校に上がってからゆっくり離婚の話し合いをするというパターンも多いのです。
離婚の申し入れをされても焦らないこと
産休、育休中に、離婚の申し入れをされ、とまどっているところで、一見有利に見える離婚条件を提示されても焦って離婚届けに署名しないことです。
契約と同じで一度署名してしまうと、あとで「こんなはずじゃなかった」というのは言えません。
私が日ごろから言っていることですが、法律は弱者の味方ではありません。知っている者の味方です。
どの選択がいいのかというのは、本当に人それぞれです。
ただ、自分にどんな選択肢があるのかを知るためにも、「離婚」という言葉が出てきたときには、早めに弁護士に相談した方が良いかもしれません。
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