弁護士コラム
仮想通貨取引と財産分与の注意点について
仮想通貨は財産分与の対象か
相模原市の弁護士の多湖です。
昨年世界中を席巻した仮想通貨と財産分与について。
私の友人弁護士も参加しているようですが、暴落で資産が3分の1になったり、暴騰で3倍になったりとかなりお忙しいようです。
余談ですが、韓国が全取引所を閉鎖すると示唆したり、中国がマイニングの禁止を始めたりしていますが、 これらの規制は日本をはじめ西側諸国の法体系からはちょっとどうなのという規制です。
マイニング自体や取引行為自体を禁止するのは経済的活動に対するかなり強度の制約なので違憲の疑い高しです。
原則、仮想通貨も財産分与の対象
さて、いきなり結論ですが、仮想通貨も財産的価値がある以上、財産分与の対象になります。
この点、株式等の一般的な有価証券等と同じです。
但し、①仮想通貨及びその利益が特有財産として認められた場合、②運用者の才覚により利益がもたらされた場合は、(全部ないし一部について)その限りではありません。
仮想通貨の資金の口座は結婚生活と分離した口座にしておく
仮想通貨ないしその利益が特有財産として認められる場合、当然のことながら財産分与をする必要はありません。
典型的な事例でいえば、独身時代からの資金を元手に仮想通貨を購入し、それを法定通貨に戻した際にも夫婦で使っていない特定の口座に分けて運用している場合には、誰の目にも特有財産であることが明らかですから財産分与の対象とされる可能性はほとんどありません。
この場合は全額除外されるかと思います。
この点は以下のブログでも言及しています。
問題は、独身時代から仮想通貨取引を始め、結婚後も結婚生活のための口座を使ってしまっていたり、給料から追加で押し目買い等をしている場合です。
結婚後に受け取った給与(共有財産)から資金を出している場合には、その利益についても配偶者の寄与が一部認められる可能性があります。
どのくらい認められるかは取引履歴や市場の経過等を精査して、エイヤっと割合的認定になるかと思います。
また、結婚生活のための口座と混ぜて、お金の出し入れを頻繁にしていると生活資金との区別が曖昧になってしまうため、区分が明確ではないとして一部について共有財産と主張される恐れがあります。
運用者の才覚で特段の利益を得た場合
運用者の才覚って何ぞやという感じですが、正直事例判断ですので一律の確たる基準はありません。
取引履歴やチャート等で自分が如何に才覚があって利益を出したのかを力説することになるかと思います。
例えば、誰も注目していない無名のいわゆる草コイン時代から育て上げ、数十倍から100倍で売り抜けた場合には運用者の才覚としてその多くが財産分与の対象外と言えるかもしれません。
今や誰でも知っているビットコインを買って「たまたま上がったので1.5倍になりました。皆も儲かっていると思います。」では厳しいかもしれません。
財産分与はいつの値段?
さて、価額の変動が非常に大きい仮想通貨ですが、いつの値段が財産分与の価額になるのでしょうか。
ちなみに価額の評価はフィアット(法定通貨)換算です。
当然ですが、イーサやビット単位で言われても裁判所は分かりません。
裁判所ではいまだにFAX全盛期ですから、「仮想通貨?ビットコインは聞いたことがあるよ。暴落したやつでしょ。」というレベルです。
仮想通貨で一番問題になるのは、財産分与の基準時とその価額だと思います。
値動きが激しすぎるからです。
財産分与の基準時については、別居時とされています。別居時に100btcもっていたら100btcで固定されます。
しかし、評価は離婚時とすることが出来ます。
そのため、別居時は1btcが100万円で、離婚時に10万円に暴落していても大丈夫ということですね。
ただ、別居時の100btcから枚数を大幅に減らしていると大変困ったことになりますから離婚係争中のトレードじゃお気を付けください。
皆さま投資はほどほどに・・。
次回は仮想通貨と自己破産を書きます。
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