弁護士コラム
葬儀費用は喪主が負担すべきか、相続人全員で負担すべきか。
相模原の弁護士の多湖です。人と揉めてしまうのは本当にストレスです。
血の繋がりがない他人と揉めるのも相当なストレスですが、相手が家族であればなおのこと。
本日は、相続時のトラブルで争点となりやすい葬儀費用についてです。
目次
葬儀費用は遺産から支出して、残りの財産を相続人で分ければいいんですよね?
「特に皆と話し合っていないけど、葬儀費用は当然遺産から支出して、残りの財産を相続人間で分ければ大丈夫ですよね?」
「法律でも当然そのように決まっているのでしょう?」
確かにそう思われる方が多いのは事実ですが、実は法律にはこのように葬儀費用を負担しなさいとは書いてないんです。
実際の遺産分割調停においても、この点について一応の協議の場は設けてもらえますが、共同相続人間で葬儀費用に関する合意見込みがなければ、葬儀費用の負担者や負担方法については「遺産分割の話ではない。」として、遺産分割調停の場から外されてしまいます。
それでは葬儀費用は誰が負担すべきなのでしょうか。
葬儀業者との関係では喪主(葬儀主催者)が債務者。
まず、葬儀業者との関係では、葬儀業者と契約した方が債務者となります。
したがって、葬儀業者に対しては、契約した喪主の方が全額の支払義務を負います。
葬儀費用の負担に関する考え方
それでは、喪主が支払った葬儀費用を共同相続人に負担してもらうことは可能なのでしょうか。
葬儀費用の負担者について争いがある場合、審判例等が示す解決として次の5つがありますが、絶対にこうしなければならないというルールはありません。
①喪主が負担すべき
東京地裁昭和61年1月28日判決
神戸家裁平成11年4月30日審判
東京地裁平成17年3月16日判決
名古屋高裁平成24年3月29日判決など
②相続人の共同負担とすべき
東京高裁昭和30年9月5日決定
福岡高裁昭和40年5月6日決定など
③葬儀費用は遺産から支出すべき
大阪家裁堺支部昭和35年8月31日審判など
④葬儀費用の負担は、専らその地方又は死者の属する親族団体内における慣習や条理によって定めるべき
神戸地裁昭和31年5月29日判決など
⑤相当額の支出である限り、相続人が負担すべきであり、相当額以上の支出は、葬儀主催者が負担すべきである
判例タイムズ643号140頁
共同相続人間での話合いの経緯、葬儀費用の多寡、遺産の帰属状況等を考慮する判例、審判例も多いですが、結果として喪主負担とされる場合も多いです。
トラブルを避けるためには事前の相続人間での話し合い。
トラブルを避けるためには、①被相続人が遺言書で葬儀費用の負担方法を定めておくか、②葬儀を行う際に相続人間でしっかり話し合っておくことが必要です。
相続人間で葬儀費用に関する合意が出来ていれば、合意に従って分担方法が決まります。
「兄が勝手に葬儀を手配してしまったが、私はもっと慎ましく行いたかった。」
「費用の説明を一度もされなかった。」
「私は相続財産が少ないのだから葬儀費用は出さない。」
「香典を貰った人が葬儀費用を負担すればいい。」
こういった葬儀費用に関するトラブルを避けるためには、事前に誰が喪主となるか、どのような方法でどの程度の規模の葬儀を行うか、香典の取り扱い、葬儀費用の負担者をどうするか等を協議しておくといいかもしれません。
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