弁護士コラム
会社の自己破産の決断時期と注意すべきこと
自己破産はお金がかかる
破産をするのはお金がないからです。
それなのに破産をするためには、多額のお金がかかります。
これは個人破産でも同じなのですが、個人破産は法テラスを利用して少なくとも弁護士費用は工面できるにも関わらず、法人は法テラスが利用出来ません。
そのため、自己破産を考える企業は、自前で弁護士費用と引継予納金を用意しておかなければいけません。
以下は、横浜地方裁判所管内(東京地方裁判所と同じ)の引継予納金です。
弁護士費用の相場も同額程度と言われています。
https://www.kanaben.or.jp/format/data/20160406yuken_yonokin_etclist.pdf
破産をするだけで数百万円が必要という事態はかなりあるのです。
事業資金が完全に底をついてからでは手遅れ
長年経営してきた会社を破産させる決心をするのはそう簡単に決断は出来ません。
家族の生活を背負ってるのは当然のこと、長年一緒に頑張ってきた従業員の生活、信頼関係を築いてきた取引先等、多くのことが頭から離れないと思います。
何とか挽回しようと高金利の金融機関からも借り入れをし始めると、債務が雪だるま式に膨らんでいきます。
そして、ある日、「このままではどうしても会社が回らない。」「自己破産しかない。」と考え始めるのですが、一度資金ショートを起こしてしまうと、差し押さえや滞納処分がたくさんかかります。
そうなってしまうと、自己破産に回せるお金までなくなり、打つ手がなくなってしまいます。予納金すら捻出できない状態では弁護士は何もできません。
取り立てを止めることも強制執行を止めることも出来ず、債権者にされるがままになってしまいます。
すなわち、事業資金のショートを起こす前が自己破産の決断時ということになります。
弁済不能に陥った後の混乱
一度、弁済がされなくなると、それまで笑顔で取引をしていた会社が手の平を返して我先に会社に押し寄せてきます(これは本当に怖いです)。
特に国と地方自治体は無情に滞納処分を掛けてきます。
滞納処分は裁判不要ですから本当に早いです。
すぐにお金を取られてしまいます。
私も苦い経験があります。
電話が毎日鳴り続けます(応対するだけでかなり大変です)。
電話に出ないと会社に来ます。
闇金等が債権者にいると執拗に脅迫され、本当に大変です。
会社に居座られてしまい、何度も説得してお引き取り頂くことは毎回のことです。
ガラスを割ってでも侵入し、物を搬出しようとする方もいます。
怒鳴られることもしょっちゅうです。
代表者の自宅も知られていますから、家まで来ます。
これを収めるためには、直ちに破産手続きの申し立てをしなければなりません。
破産手続開始決定により、債権者が個別に取り立てをすることは禁じられるからです。
ガラスを割るのはともかく、債権の取り立てを行おうとするのは、債権者として当然の権利行使なので、破産しない限り、これを止めてくださいということは出来ないのです。
従業員としても自己破産をしてくれないと困る
事実上の事業停止だけして、代表者の方が出奔してしまうケースもありますが、債権者はもちろん従業員の方が本当に困ります。
それは未払残業代や離職票等の点です。
自己破産手続きをしていれば、破産管財人がこれらの手続きが円滑に進むよう配慮してくれますが、事実上の事業停止のままだと、未払残業代等の請求が煩雑(余計な証明書が必要になったり従業員自ら手続きしなければいけなかったり)になります。
債権者も破産ということになれば、問題なく損金扱いにできます。
従業員の立場としても、債権者の立場としても、究極の場合には自己破産をしてくれないと困るのです。
自己破産は再スタートを切るための制度
自己破産は終わりの制度ではありません。
再スタートを切るための制度です。
債務を負ったままでは、新しい生活先でいつ債権者から給与の差押えがかかるか分かりませんし、知らない番号から電話がかかってくる恐怖におびえ続けなければなりません。
正直な話、法人破産はしんどいです(弁護士も相当しんどいです)。
でも、これをしないと前に進めません。
出来るだけスムーズに会社の最期を看取る。そのためには早めに弁護士に相談することが大切です。
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