弁護士コラム
交通事故の逸失利益と醜状痕(しゅうじょうこん)
こんにちは。相模原の弁護士の多湖です。
さて、本日は、「交通事故の後遺障害の醜状痕(しゅうじょうこん)と逸失利益」がテーマです。
交通事故の後遺障害の醜状痕と逸失利益
醜状痕(しゅうじょうこん)とは
醜状痕とは何でしょうか。
交通事故で身体が外から衝撃を受けると、怪我をすると、皮膚や筋肉等にもダメージが残ります。あるいは手術などの治療のためにやむを得ず、身体を傷つけることもあります。
それらが原因で本来の外面とは違う状態、すなわち怪我の跡が残ってしまうことがあります。
これを醜状痕といいます。
醜状痕と後遺障害の等級
自賠責の後遺障害は、下記のとおりです。
- 7級12号「外貌に著しい醜状を残すもの」
- 9級16号「外貌に相当程度の醜状を残すもの」
- 12級14号「外貌に醜状を残すもの」
下記の記載もあります。
- 14級4号「上肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの」
- 同5号「下肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの」
また、醜状痕の認定が厳しいため、本来は非該当なのですが、14級9号の「局部に神経症状を残すもの」で救済したのであろうという事案も散見されます。
細かい基準は今度別の機会に解説しますが、「てのひらの大きさ」ってすごく大きいですからね・・
足や腕にてのひら未満の大きさの醜状痕があっても「非該当」ってどうなのかと、交通事故にあわれた多くの方がおっしゃっています。
醜状痕と逸失利益
まず、交渉段階において、保険会社は醜状痕と逸失利益については、かなり厳しめの判断をすることが多く、”まずは認めない”というところから交渉を開始することが多かったりします。
判例でも接客や転職を控えている場合など、醜状痕で逸失利益を認めるケースは増えてきていますが、例えば、東京地方裁判所平成22年8月31日判決は、症状固定時26歳の主婦について、オトガイ部瘢痕(7級、ひきつれによる違和感があること、歯牙欠損14級)が認められた事案で、「外貌醜状については主婦であることから大きく労働能力に影響するとは考えられないが、影響が全くないとは言えず、ひきつれによる違和感があること、歯牙欠損による補綴は家事労働その他に一定の程度影響を与えること等から、41年間16%の労働能力喪失」を認めました。
また、名古屋地方裁判所平成28年7月27日判決は、症状固定時23歳の女子大学生について、顔面部の醜状痕(7級)及び歯牙障害(12級)について、コミュニケーション能力に相当な支障が生じていることや被害者の年齢等を考慮し、25%の労働能力喪失を認めています。
このように接客業などを除き、外貌醜状(がいぼうしゅうじょう)だけでは逸失利益を認めず、他の神経症状等と併せたり、種々理屈をこねて、やっと認めるケースも少なくありません。
本来は7級の労働能力喪失率は、56%です。
醜状痕については、等級通りの逸失利益は認められていないのが実際です。
醜状痕で逸失利益が認められるためには
保険会社に対して、あるいは裁判所において逸失利益が認められるためには、被害者の方の年齢、境遇、職業、醜状痕の内容などに照らして、逸失利益に影響を与えるかを主張立証し、その割合を出来るだけ高く主張していくほかありません。
後遺障害まで認められなくても、慰謝料が増額されるケースもありますから、醜状痕について、賠償金の提示があった場合には、一度、弁護士に相談することを強くお勧めします。
以 上
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