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弁護士コラム

闇バイトとSNS、これからの若者が注意すべき点

刑事事件
【弁護士コラム】闇バイトとSNS、これからの若者が注意すべき点

こんにちは。神奈川県相模原市の弁護士の多湖です。


去年5月に京都市で起きた時計店強盗で、SNSで実行犯を募り、“ルフィ”からの詳細な指示を伝えていた男について、令和5年9月1日、大阪地裁は懲役12年の判決を言い渡しました。

https://news.yahoo.co.jp/articles/5feacf9cfb22ce041dca708a71963c85334c3ad2


誰とでも簡単につながれるようになった、現代。


スマホもSNSもマッチングアプリも昔はなかったですから、悪意ある人とつながってしまう機会は、昔と比べて必ず増えています。


他方で、法律は基本的に18歳以上を「大人」として扱う方向に徐々にシフトしており、高校を卒業したばかりの若年者は特に気を付けなければなりません。


以下では、昨今の成人年齢に関する法改正を紹介しながら、「闇バイト等の危険性」について解説します。

民法の成人年齢引き下げ

令和4年4月1日から、民法の成人年齢が18歳に引き下げられ、大人として扱うようになりました。これまで未成年者である18歳、19歳が契約行為をするには、親権者法定代理人の同意が必要でした。

自分だけの判断で契約が出来るということは、自由を得た半面、それだけ危険に晒されやすいということでもあります。

少年法の改正

改正少年法も、令和4年4月1日から施行されています。

成人年齢の引き下げを、少年法においてどのように位置づけるか紆余曲折ありましたが、主な改正点は、18歳と19歳(特定少年)の取り扱いが今までと異なることです。

一つ目は実名報道が解禁されること。これまで20歳未満の少年については、犯人の実名・写真等の報道が禁止されていましたが、特定少年について起訴された場合、これが認められることとなりました。

過ちを犯した場合に、全国に知れ渡ってしまうということです(デジタルタトゥーの問題)。

二つ目は、死刑、無期または、短期1年以上懲役、禁固に当たる罪の事件が原則、原則逆走対象事件(成人と同様の手続き)に含まれました。

刑事においても、民法に近づけて、18歳、19歳は、特定少年と呼ばれ、より大人と同様の取り扱いをされるようになったといえます。

法務省 「少年法が変わります。」
https://www.moj.go.jp/keiji1/keiji14_00015.html

学生や若者が詐欺被害に遭ったり、犯罪に巻き込まれるケース

若年者が詐欺被害あったり、犯罪に巻き込まれるケースは確実にあります。

最初のきっかけはほとんどSNSなど

携帯電話も満足に普及していなかった我々の若い時代とは異なり、「知らない人間」あるいは「知らない人間を信用している知人、友人」を信用して詐欺被害に遭ったり、犯罪に巻き込まれるというのは身近になりました。

ごく普通のご家庭の、ごく普通の子が騙されたり、犯罪に巻き込まれています。

昔は「知らない人について行ってはいけません。」という言葉を守り、何かの組織に所属したり、誰かの紹介でしか関係が広がっていかなかった社会でしたが、不特定多数と簡単に関係を持てる社会に変わったため、そういう普通の子と悪意ある者が簡単に接触できるようになった、ということだと思います。

SNSで知り合った同年代の子と食事をしていたら、儲け話をされて借金を背負わされて自己破産するケース

SNSで知り合った同年代の子と、アニメや芸能人などの共通の推しの話をして仲よくなったら、”お金が増やせるアプリがある”と悪意のある人間のもとに連れていかれ、もっともらしい資料と説明を聞いて、アプリを買わされるケース。

お金を持っていないと、消費者金融で借金をしたうえで支払わせられ、若くして自己破産をするということがあります。

SNSでアルバイトに応募したら、実はオレオレ詐欺の受け子だったケース

SNSの高額バイトに申し込んだら、「駅のロッカーから荷物を取って特定の場所に届ける仕事」だったり、「民家にお金を集金に行く仕事」だったりします。

これは「オレオレ詐欺の受け子」なのですが、問答無用で、一発実刑(刑務所)ですから、本当に気を付けてください。

普通の家庭の普通のお子さんが巻き込まれ、親御さんが、子どもを守るために、老後に貯めていた数百万円の示談金を支払ってなんとか執行猶予を勝ち取る、という案件です。

本当に悲惨です。知らなかったが通じない怖い世界です。


「愛媛県警 受け子ってなに?」
https://www.police.pref.ehime.jp/shikokuchuo/seian/tirasi/ukeko.pdf

信頼している先輩から聞いた儲け話を、アルバイト先で紹介したら、アルバイト先の学生が全員、数万円から10万円ずつ詐欺被害に遭ってしまったケース

儲け話というのは本当にたくさん転がっています。
オンラインカジノだったり、ブックメーカーだったり、仮想通貨だったり、投資だったりします。

よく消費者系の弁護士の間では、「ウィルス」に例えられます。

最初は少し儲けさせたり、騙す側も巧妙なので、自分だけが知っていては申し訳ないと思って友人や知人に広めてしまいます。

その人たちは友達が自分を騙すわけがないと思って、さらに広めて被害を拡大させます。過去には、一つのアルバイト先全員が全滅したこともありました。

他人に儲け話をしては絶対にいけません。

SNSの注意点

犯罪集団が、大学生や20代の若者を狙っているのは明らかです。

若年者は概して、「学校」や「親」という鎧に守られてきたため、嘘や悪意に晒された経験が少なく、社会経験もないため、騙されやすいからです。

また、同じく、別の意味で被害に遭いやすい高齢者と違って、若者として行動力があるため、悪意のある人物とつながりやすいということもあります。

SNSは、身分証明書を提示せずに利用できるため、何かがあっても自分の正体がバレずに、犯罪メンバー(闇バイト)を集めたり、詐欺の相手を探すことが出来るという利点があります。

全体の利用者の何パーセントかには、必ず悪意ある者が潜んでいると認識する必要があります。

大切なのは法教育

まず、自分が狙われていることを自覚すること

私が好きな漫画に「HUNTER×HUNTER」という漫画があるのですが、その中で主人公が仲間とグリードアイランドというゲームに挑戦します。

主人公と仲間は意気揚々と、ゲームに参加するのですが、開始早々、ゲームのルールを知らない二人に対して、悪意のある他のプレーヤーが二人を喰い物にしようと種々の攻撃を仕掛けてきます。

若年者を対象とした被害は、この構図に似ています。

社会にまさに今漕ぎ出した、ルールを良く知らないものを積極的に狙うのです。

特に成人年齢が引き下げられたため、悪意ある者からすれば、”より若く、より騙しやすい対象が増えた”とさえ考えられているかもしれません。


では、若者が身を守るにはどうすればいいでしょうか。


それは、「社会やSNSには悪意があるものが必ずいて、自分も巻き込まれるかもしれない。」ことをまず自覚することです。


自分なりの防衛法を構築すること

国は消費者契約法など、消費者法関係の知識の学校での普及に努めているようですが、正直、最前線の現場を知らない学校にどこまで実践的な講義が出来るのか疑問です

日本の英語教育と同じ問題で、教科書でいくら教えても、実践的でなければ、実生活では使い物にならないからです。

そこで私が、シンプルな方法としてお勧めするのは、「自分ルール」の徹底です。

私が身を守るためにお勧めしたい「自分ルール」は、

(1) 金融庁の許可がある金融機関以外にお金を渡さない。

(2) 儲け話を広めない。

(3) 「話し相手」が信じられるかどうかで、話を信用するのは止めて、話の内容が自分ルールに反するかどうかだけを考える。
※話し相手も誰かに騙されている場合、100%善意で勧めてきますから、一緒に騙されてしまいます。

(4) 身元の不確かなSNSのアルバイトの募集には応募しない。

(5) 迷ったら信用できる年長者に相談する。

(6) 「今日中に応募しないと応募できなくなる」みたいなものには応募しない。


といったところでしょうか。

「自分ルール」に反するものは、損しても構わないと割り切ってしまいましょう。


20歳前後で、刑務所暮らしや、自己破産なんて本当にもったいないですし、傷つくのは自分だけではありません。

まずは自分の身を守るために、必要なことを身につけて欲しいと思います。

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