弁護士コラム
弁護士が解説する「ペアローン」のデメリット
相模原の弁護士の多湖です。
随分とブログの更新をさぼってしまいました。
さて、皆さんは住宅ローンを組むことで悩まれたことはありますか?
自分一人では信用が足りないとペアローンをすすめられたことはありますか?
私は、友人、知人、依頼者さんに関わらず、ペアローンを組むべきか問われたときは、私の経験をお話しした上で、全力でお止めしています。
今日はそんなペアローンについてのお話。
ペアローンとは何か。
グーグル先生によると、ペアローンとは「同一物件に対して複数の債務者がそれぞれローン契約を行い、お互いに連帯保証人になる借入方法」をいうとされています。
一般的にはまず一人の収入で金融機関にローンの借り入れを相談すると思いますが、ローンで借りられる金額って自分の収入に応じて決まりますから、目標額まで借りられないことがあるわけですね。
*特に弁護士は自営業者ですから、公務員や大企業のサラリーマンと違って、住宅ローンなんてスムーズに組めません。
そんな時、「〇〇様は奥様が〇〇市役所(OR××銀行)にお勤めですね。〇〇様お一人では難しいですが、奥様とお二人で力を合わせて住宅ローンを借りるペアローンをご検討されては如何でしょうか。」と言われるわけです。
「ん、夫ないし嫁と二人で借りれば借りられるの?俺らちゃんと返せるし、OKじゃん。ラッキー。」
といった具合です。
ペアローンが牙をむくシーン
もちろんペアローンで完済できるケースの方が多数派だとは思います。
*そうじゃないと金融商品として成り立たないですからね。
しかし、人生ってそんなに順風満帆に行くのでしょうか。
ペアローン(一部単独の住宅ローンと共通)が特に牙をむくシーンは、何でしょうか。
それはずばり「離婚」と「自己破産」です。
今まで何十件これで頭を痛めてきたことか・・。
シーン1 離婚
「夫が他に女性を作って家を出て行ってしまいました。私も子供を連れて実家の〇〇に戻りたいのですが、ペアローンを組んでいて、家を売却してもたくさんのローンが残っていしまいます。夫は自分の負担分のローンすら払いたくないって言っています。先生、私は悪くないのにローンの返済何とかならないのですか。」
「夫がうつ病になってしまいました。もう2年目になります。病院の先生からはあとは本人の気持ちの持ちようだよと言われているのですが、全く働けない状態が続いています。傷病手当もなくなりました。実は私はペアローンを組んでいて、現在、私が昼の仕事と夜の仕事を掛け持ちして二人分の住宅ローンを払っています。ローンの借り換えも考えたのですが、私一人の収入ではどこも貸してくれません。病気のせいか分かりませんが、夫は私に感謝しているのかしていないのか分かりません。毎日辛くて離婚をしたいと思っています。私の分は仕方ないのですが、離婚後の夫の分も私が払わないといけないのでしょうか。」
「妻と昨年離婚したのですが、妻が家から出て行ってくれません。離婚訴訟の時には、住宅ローンのマイナスが多すぎたため、財産分与の問題として自宅を扱ってもらえませんでした。そのため、妻と2分の1ずつの共有状態が続いています。私は住んでいない家の住宅ローンを払いたくないため、売りたいのですが、妻は自宅の所有権は自分にもあるから無償で使用する権利があるし立ち退きも売却もしないと言い張っています。」
シーン2 自己破産
「夫がリストラされてしまい、転職活動をしているのですが、なかなか転職先が決まりません。年齢も40代ですし、なかなか依然と同じ待遇ということにはならないようです。失業を契機とした生活費のマイナスが多く、住宅ローン以外のマイナスが多くあります。夫と子供達と相談し、家賃が安い郊外に引っ越そうと思うのですが、夫が自己破産した場合、私のペアローンはどうなりますか。私も自己破産しないといけないのですか?」
ペアローンの問題点
ペアローンの問題点を理解するには、①「連帯保証」とか「連帯債務」といったモノと②本来一人では借りられないローンであること③共有持ち分というところをよく理解しておく必要があります。
①まず、「連帯保証人」ですから、どんな理由があれ、「主債務者」である夫ないし妻がローンを返済できなくなれば、どれだけ自分が悪くなくても連帯保証人は全額のローン返済義務を負います。
それが不倫でも病気でもリストラでも皆同じです。
団信でカバーできない事象などいくらでもあります。
これが第一の問題点。普通の住宅ローンは最近、機関保証といって信用保証協会を入れることが多いですからね。
*例え、夫婦が連帯保証を掛け合わず、機関保証を掛け合っている場合は、他方の借金が増えることはありませんが、自宅全体について抵当権実行(競売)になりますから、自宅を失い、かつ結局自分も自己破産等に陥ることが多いですから結論はあまり変わりません。
②そして、最大のネックはそのような状態になった場合、住宅ローンを完済するのが難しいということです。
何故ならそのような場合、自分一人の収入では到底返せない金額の住宅ローンが自分にのしかかるからです。
単純に考えても、二人で働いてやっと返していたものを一人だけで返すとどうなるか、かなりシンドイですし、無理な場合が多いですよね。
③最後が共有持ち分の問題です。
ペアローンを組むとき、それぞれがお金を出し合って買ったことになりますから、例えば2分の1ずつ共有持ち分を入れます。
共有者は単独で使用収益する権限がありますから、共有関係の解消をしたり、出て行かせたりするのはそれはもう骨が折れますよ(もめると年単位で、弁護士費用もすごくかかります)。
ペアローンは夫婦を文字通り一蓮托生にする。
このようにペアローンを組むべきか検討する際、しっかりリスクについては検討していただきたいと思います。
「二人で返せれば借りられるの?ラッキー。」とは行かないということです。
どんなに良い夫、妻でも突然病気(団信の適用対象外の)になってしまうことはあります。
会社が倒産してしまうこともあります。
相手のせいではない場合であれば、自分も一緒に自己破産をすることに抵抗はないかもしれません。
でも、相手方の浮気や暴力が原因だったらあなたはどうしますか・・?
あなたが悪いんだから私のローンを何とかしてとは言えません(少なくとも法律上は)。
単独で組む住宅ローンでさえ、完済に至るまでには色々乗り越えなければなりません。
ペアローンは、借りられる金額は二倍になるかもしれませんが、返せなくなるリスクも二倍になるのです。
リスクも踏まえ、良く考えた上での決断であれば、結果も受け入れられると思います。
ペアローンが原因で実際に苦しんでいる人達を弁護してきた弁護士として、是非検討の一助として頂ければと思います。
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