弁護士コラム
刑事事件で長期間の身柄拘束(逮捕勾留)を避けるためにやるべきこと
相模原の弁護士の多湖です。
神奈川に来て、早速勾留請求却下2件(うち一件は検察官の準抗告も排除)があったので、本日は刑事事件と身柄拘束についてです。
警察官は朝方やってくることが多い
踊る大捜査線や、相棒など、刑事ドラマは数知れず。
テレビドラマなどでは、刑事さんが被疑者宅を訪れ、逮捕状を示しながら「奥さん、警察です。」「旦那さんはいますか。」というシーンを良く見かけますが、現実世界においては、警察は朝の早い時間帯にやってくることが多いです。
逮捕された方に聞くと、「会社に行こうと思って、準備をしていたら警察の方が来ました。」とおっしゃることが多いのです。
友人、知人の検察庁や警察の方々にそのことを聞くと、「朝の時間帯は家にいらっしゃることが多いので。」「帰宅時間帯だとかえって目立ってしまうしプライバシーが。」というのがその理由だそうです。
逮捕とは
「逮捕」とは「逃亡または罪証隠滅を防止するため、被疑者の身柄を拘束し、指定場所に引致すること」をいいます(成文堂「刑事訴訟法」・上口裕著)。
日常的にニュースで「逮捕」という言葉をよく耳にしていますし、ドラマでも手錠を掛けられている姿をよく目にするので慣れてしまっているかもしれませんが、人を強制的に拘束して狭い部屋に閉じ込められる「逮捕」ってすごいことです。
無実かもしれないそれまで自由に生きてきた人を逮捕できちゃうわけですから。
そのため、刑事訴訟法199条1項では、逮捕状による逮捕が定められています。
簡単にいえば、犯罪を犯したと疑われるのが相当な方について、警察や検察が逮捕状の請求を裁判所にして、裁判官が逮捕が相当と判断すると、強制的に身柄拘束をすることが出来るようになる仕組みになっています。
第三者である裁判所に捜査資料を見せて逮捕の濫用を防ぐための最低限の担保をしているわけです。
逮捕しておけるのは72時間以内
司法警察員が逮捕状により被疑者を逮捕したときは、48時間以内に検察に送致しなければなりません。
そして、検察官は被疑者を受け取ってから24時間以内に裁判官に勾留請求しなければなりません。
そのため、捜査機関が逮捕しておけるのは長くても72時間です。
実務上はもっと早く勾留に切り替えてしまうことが多いです。
勾留とは
逮捕から72時間経てば、身柄が解放されるかというとそうはいきません。
そのあとに待っているのは、本日のメインテーマである「勾留」です。
「勾留」とは、「逃亡または罪証隠滅を防止するため、比較的長時間身柄を拘束する裁判とその執行」をいいます(成文堂「刑事訴訟法」・上口裕著)。
勾留は勾留請求の日から10日間あり、やむを得ない事由があるときは、さらに10日の延長が可能です。
合計20日間となります(内乱罪・外患罪などはさらに5日の延長が可能)。
勤めている方が、20日間も社会から切り離されてしまうとどうなるか、想像に難くありません。
身柄拘束を解くには勾留請求却下が重要
身柄拘束の必要がある重大事件はやむ得ないですが、実際には身柄拘束の必要性がない事件まで漫然と機械的に逮捕後勾留されているのが実際です。
身柄拘束を解くためにまず大事なのは、勾留請求をされた裁判官に事案を適切に把握してもらい、法律の要件を満たすかどうか適切な判断をしてもらうことです。
勾留決定が出てしまうと、「準抗告」という不服申し立てが出来ますが、この「準抗告」がなかなか通りません。
判断をする裁判官も準抗告では、「どのような決定を出すのが妥当か。」という視点よりも、「一度した判断を覆すほどの誤りが原決定にあるか」という視点に切り替わりますので、その分ハードルが高くなります。
そのため、やはり逮捕されたらすぐに弁護士を探し、勾留決定前に裁判官と一緒に面談をし、勾留決定を検討する際に有利な事情に関する意見を述べてもらうことが必要です(国選弁護人は勾留後に選任されるので一番肝心なこれが出来ないのがネックです)。
身柄拘束を解くかどうかは非常に重い判断です。
裁判官としても、身柄拘束を解いた場合に、監督をする家族がどのような人なのか、その背景事情というのも、もちろん気になるからです。
逮捕後すぐの相談が必要
もしご家族が逮捕された場合、身に覚えがあるかないかに関わらず、1分でも早い弁護士へのご相談をお勧めします。
無実の方はもちろん、身柄拘束の必要のない方にとって、逮捕後の初動がその後の道のりを大きく変えていってしまうこともあるからです。
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